仕事の未来

改正育児・介護休業法2026年施行:残業免除の実務ガイド

2026年施行の改正育児・介護休業法は、働き方と企業の人事戦略に大きな変革をもたらします。本ガイドで、新制度の詳細と実務対応を解説。

18 分で読める
改正育児・介護休業法2026年施行:残業免除の実務ガイド
17.13%
育児休業取得率(男性)
2022年度の男性育児休業取得率(厚生労働省発表)
約250万人
残業免除適用対象者
小学校就学前の子を持つ労働者と要介護家族を持つ労働者の推計
指導・勧告
企業への罰則
義務違反の場合、指導・勧告に加え企業名公表の可能性も
2026年4月1日
施行日
改正育児・介護休業法の施行予定日

2026年、日本の働き方に新風:育児・介護者の残業免除が義務化へ

日本の労働市場は、少子高齢化と働き方の多様化という二つの大きな波に直面しています。その中で、ワークライフバランスの実現は、企業にとって喫緊の課題であり、競争力維持のための重要な要素となりつつあります。2026年、私たちはこの課題に対する新たな一歩を踏み出します。改正育児・介護休業法が施行され、育児や介護を担う労働者に対する残業免除が企業の義務となるのです。これは単なる法改正ではなく、企業文化、人事戦略、そして個人のキャリアパスにまで影響を及ぼす、まさに「仕事の未来」を再定義する大きな転換点となるでしょう。本記事では、この改正法の核心に迫り、残業免除の義務化対象申請実務、そして企業が今から準備すべきことを、具体的なガイドとしてお伝えします。

改正育児・介護休業法の核心とは?

2026年に施行される改正育児・介護休業法における最大の変更点は、育児・介護を行う労働者からの時間外労働(残業)免除の申し出に対し、企業が応じることを義務付ける点です。これにより、子育てや家族の介護を両立する労働者は、より安心して働き続けられる環境が整備されます。これは、人材の定着、多様な働き方の推進、そして企業価値向上に直結する重要な施策と言えるでしょう。

育児・介護残業免除の対象は誰? 具体的な要件と範囲を徹底解説

改正法によって残業免除の対象となる労働者は、育児または介護を行う特定の要件を満たす方々です。ここでは、その具体的な対象者と申請要件について詳しく見ていきましょう。

育児を行う労働者の対象要件

育児を行う労働者で残業免除の対象となるのは、原則として小学校就学前の子を養育する労働者です。これには、実子だけでなく、養子縁組をした子や、特別養子縁組の監護期間中の子なども含まれます。重要なのは、法律上の親子関係だけでなく、実質的に養育を行っているかどうかが判断基準となる点です。例えば、共同で親権を持つ場合や、事実婚の関係にあるパートナーの子を養育している場合も、個別の状況に応じて対象となる可能性があります。

2026年からの新制度では、「小学校就学前」の子を持つ全ての労働者が残業免除を申し出られるようになります。これは、共働き家庭の増加や、育児における男女共同参画の推進を後押しする画期的な変更です。

介護を行う労働者の対象要件

介護を行う労働者の場合、要介護状態にある家族を介護する労働者が対象となります。ここでいう「家族」とは、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫を指します。また、「要介護状態」とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態を指します。具体的には、要介護認定を受けているかどうかに限らず、医師の診断書などで常時介護が必要であることが証明できれば対象となり得ます。

育児のための時間外労働制限制度の利用率(%)

現行制度との比較:何が変わるのか?

現行の育児・介護休業法にも時間外労働の制限に関する規定はありますが、改正法では企業の対応が「義務」となる点が大きく異なります。現行法では企業努力義務に留まる部分がありましたが、2026年からは、労働者からの申請があった場合、企業は原則として残業を免除しなければなりません。

項目現行制度(〜2025年)改正後(2026年〜)
残業免除の申し出育児・介護のための時間外労働の制限を請求できる育児・介護のための時間外労働の免除を申し出ることができる
企業の対応請求があった場合、企業は制限に努める義務申し出があった場合、企業は原則として応じる義務(免除)
対象期間(育児)小学校就学前の子小学校就学前の子(変更なし)
対象家族(介護)配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫(変更なし)
罰則指導・勧告が主義務違反の場合、指導・勧告に加え、企業名公表等の可能性も強化

残業免除の申請実務:労働者と企業が知るべき手続き

残業免除制度を円滑に運用するためには、労働者と企業双方において、正確な申請手続きと適切な情報共有が不可欠です。ここでは、具体的な申請の流れと企業が準備すべき事項を解説します。

労働者による申請手続きのステップ

  1. 申し出の意思表示: 労働者は、残業免除を希望する旨を企業の人事担当部署に申し出ます。これは口頭でも可能ですが、後々の誤解を避けるためにも書面での提出が推奨されます。
  2. 申請書の提出: 企業が定める様式に従い、「育児・介護のための時間外労働免除申請書」などを提出します。この際、対象となる子の氏名・生年月日、または要介護者の氏名・続柄・要介護状態を証明する書類(診断書等)の添付が求められる場合があります。
  3. 期間の指定: 免除を希望する期間を明確に記載します。育児の場合、原則として子が小学校就学の始期に達するまで、介護の場合は最大1年間(複数回に分けての利用も可能ですが、合計期間に上限あり)となります。
  4. 承認の通知: 企業は申請内容を確認し、労働者に対して免除の承認または不承認を通知します。不承認の場合は、その理由を明確に伝える必要があります。

労働者が残業免除を申し出る際は、企業側とのコミュニケーションが鍵となります。特に、免除期間や業務への影響について、事前に相談することで、よりスムーズな移行が可能になります。

企業が準備すべき実務対応

企業は、法改正に先立ち、以下の実務対応を進める必要があります。

  1. 就業規則等の改定: 残業免除に関する規定を就業規則に盛り込み、義務化の内容を反映させます。これには、対象者、申請手続き、免除期間、および違反時の措置などが含まれます。
  2. 社内規程の整備: 育児・介護休業規程や時間外労働規程なども見直し、一貫性を持たせる必要があります。申請書の様式作成も必須です。
  3. 情報提供と周知徹底: 従業員に対し、改正法の概要、残業免除制度の対象者、申請手続き、企業の対応方針などを研修や社内ポータルを通じて周知徹底します。
  4. 代替要員の確保と業務体制の見直し: 残業免除によって発生する業務のしわ寄せを防ぐため、業務分担の見直し、人員配置の最適化、または外部リソースの活用などを検討します。
  5. 人事評価制度の見直し: 残業免除を選択した従業員が不利益を被らないよう、評価基準や目標設定について柔軟な運用を可能にする仕組みを検討します。
改正法への企業準備状況(2024年末時点予測)(%)

申請却下が許されるケースとは?

原則として企業は残業免除の申し出に応じる義務がありますが、例外的に免除が認められないケースも存在します。主な例外は以下の通りです。

  • 日雇い労働者: 雇用期間が極めて短い労働者。
  • 勤続1年未満の労働者: 企業が別途定める場合を除き、対象外となることがあります。
  • 週の所定労働日数が2日以下の労働者: 業務の性質上、残業免除が困難な場合。
  • その他、事業の正常な運営を妨げる場合に著しい支障がある場合: 極めて限定的であり、企業側がその合理的な理由を明確に説明できる必要があります。この場合、企業は労働者と十分に協議し、代替案を提示するなどの努力義務が課せられます。

企業が直面する課題とメリット:変化を成長の機会に

改正法への対応は、企業にとって一時的な負担となるかもしれませんが、長期的には大きなメリットをもたらす可能性を秘めています。課題を乗り越え、変化を成長の機会と捉える視点が重要です。

導入による課題

  • 業務量の再配分: 特定の従業員の残業免除により、他の従業員への業務負担が増加する可能性があります。
  • 人件費の増加: 代替要員の確保や業務効率化のための投資が必要となる場合があります。
  • 制度への理解浸透: 新しい制度に対する従業員間の理解不足が、不公平感や軋轢を生む可能性があります。

導入によるメリット

  • 優秀な人材の定着: 育児・介護と仕事の両立を支援することで、従業員のエンゲージメントと定着率が向上します。
  • 企業イメージの向上: ワークライフバランスを重視する企業として社会的な評価が高まり、採用活動においても優位に立てます。
  • 生産性の向上: 従業員が心身ともに健康な状態で働くことで、結果的に生産性や創造性が向上する可能性があります。
  • 多様な働き方の推進: 時間や場所に縛られない働き方(リモートワーク、フレックスタイムなど)の導入を促し、組織全体の柔軟性を高めます。

まとめ:2026年を見据え、今から始める準備

2026年の改正育児・介護休業法施行は、企業にとって人事戦略の再構築を迫る重要な節目です。残業免除の義務化は、育児・介護を担う労働者が安心して働き続けられる環境を整備し、ひいては企業全体の持続的成長に貢献するものです。単なる法令遵守に留まらず、これを契機として、より柔軟で多様な働き方を推進する企業文化を醸成することが求められます。

本ガイドが、企業担当者の皆様、そして育児・介護に携わる労働者の皆様にとって、新制度への理解を深め、円滑な移行を支援するための一助となれば幸いです。今から準備を始め、2026年の新たな「仕事の未来」を共に創り上げていきましょう。

FAQ: よくある質問

Q1: 残業免除は、申請すれば必ず認められるのですか? A1: 原則として企業は申請に応じる義務がありますが、日雇い労働者や勤続1年未満の労働者、週の所定労働日数が2日以下の労働者など、一部の例外規定があります。また、事業の正常な運営に著しい支障がある場合は、企業が合理的な理由を説明し、代替案を協議する努力義務が課せられます。

Q2: 残業免除期間中、給与はどのように扱われますか? A2: 残業手当が支給されなくなるため、当然ながら残業免除分は給与が減少します。基本給やその他の手当については、企業の就業規則に基づき支給されます。

Q3: 育児のための残業免除は、子が何歳になるまで利用できますか? A3: 育児のための残業免除は、子が小学校就学の始期に達するまで利用することができます。これは、子が6歳になる年度の3月末までを意味します。

Q4: 介護のための残業免除は、何回でも申請できますか? A4: 介護のための残業免除は、原則として対象家族一人につき、連続または分割して最大1年間まで取得できます。詳細は企業の就業規則をご確認ください。

Q5: 管理職も残業免除の対象になりますか? A5: 労働基準法上の管理監督者に該当する場合、そもそも時間外労働の概念がないため残業免除の対象外となります。しかし、名ばかり管理職などで実態が一般社員と変わらない場合は、適用対象となる可能性があります。

Q6: 残業免除を申し出たことで、人事評価が下がることはありますか? A6: 育児・介護休業法では、残業免除の申し出を理由として、労働者に不利益な取り扱いをすることを禁じています。企業は、評価制度の見直しを含め、公平な評価を行うよう努める必要があります。

2026年、育児・介護者の残業免除義務化は、日本の「仕事の未来」を再定義する。

Get the Digest

Sharp, original reporting in your inbox. One weekly email, no noise.

よくある質問

残業免除は、申請すれば必ず認められるのですか?
原則として企業は申請に応じる義務がありますが、日雇い労働者や勤続1年未満の労働者、週の所定労働日数が2日以下の労働者など、一部の例外規定があります。事業の正常な運営に著しい支障がある場合も限定的に拒否できる可能性がありますが、企業は合理的理由の説明と代替案の協議努力が求められます。
残業免除期間中、給与はどのように扱われますか?
残業免除期間中は、時間外労働がなくなるため、その分の残業手当は支給されません。基本給やその他の手当については、企業の就業規則に基づいて支払われますので、全体の給与は減少します。
育児のための残業免除は、子が何歳になるまで利用できますか?
育児のための残業免除は、原則として子が小学校就学の始期に達するまで利用可能です。これは、子が6歳になる年度の3月末までを意味します。
管理職も残業免除の対象になりますか?
労働基準法上の管理監督者に該当する従業員は、時間外労働の概念がないため、残業免除の対象外となります。しかし、実態が一般社員と変わらない「名ばかり管理職」の場合は、適用対象となる可能性があります。
残業免除を申し出たことで、人事評価が下がることはありますか?
育児・介護休業法では、残業免除の申し出を理由とした労働者への不利益な取り扱いを明確に禁止しています。企業は公平な評価を行うため、評価基準や目標設定の柔軟な運用を検討し、必要な見直しを行う必要があります。

出典

  1. 厚生労働省:育児・介護休業法の改正について
  2. 厚生労働省:育児・介護休業法に関するQ&A
  3. 日本経済団体連合会:改正育児介護休業法への対応ガイド
  4. 独立行政法人労働政策研究・研修機構:育児休業等に関する実態調査